企業におけるAIエージェント活用の始め方

弊社にも複数の企業様からAI活用のご相談を頂く機会が増えてきました。特に「AIエージェントを活用して業務効率化を図りたい」というご相談が多く聞かれるようになった印象です。このAIエージェント活用の進め方について、弊社がご提案している内容を一部抜粋する形で今回のコラムを執筆しています。

ご相談の多くは「AIが業務に効くのは分かった。けれども、何から手をつければいいのか分からない」という段階からのスタートです。そこで弊社が最初にお伝えしているのは、AIエージェントは、正しい順番で進めれば企業の規模を問わず着実に効果が出るツールだ、ということです。本コラムでは、その「始め方」――どの業務から始め、どのツールを選び、どうすれば安全に使え、何を準備すれば効果が出るのか、そしてどう広げていくのか――を、実際のご提案から要点だけを抜き出してご紹介します。

株式会社ロクシアシステムズは、福岡と東京を拠点に、クラウド導入支援(Azure・Microsoft 365)とAI活用・DX支援を全国のお客様へ提供するIT企業です。Microsoft 365 Copilot(Copilot Cowork)をはじめ、Claude Cowork・ChatGPT Work・Gemini Sparkなど主要なAIエージェントサービスを非エンジニアでも使える形で業務に定着させるご支援から、帳票入力を自動化するAI-OCRプライベートや電話対応を自動化するAI-Voiceプライベートのようなお客様専用のAI環境の構築まで、幅広く手がけています。専門用語はできるだけ噛み砕いて説明します。

そもそも「AIエージェント」とは何か

最近よく聞く「AIエージェント」とは、ひとことで言えば言葉で指示するだけで、面倒な作業を代わりに進めてくれるデジタルの秘書です。プログラミングの知識は要りません。「先週の売上をまとめて」「この英語のメールを日本語にして」と話しかけるだけで、AIが意図をくみ取って作業を進めます。ChatGPTやGeminiなど、すでにあるサービスをそのまま使えば始められます。用途で見ると、AIエージェントは大きく3つの型に分けて考えると分かりやすくなります。

多くの企業がまず効果を実感しやすいのは、真ん中の「業務自動化型」です。定型レポートの作成やExcelの繰り返し作業といった、毎日・毎週の決まった仕事から始めるのが定石です。

何から始めるか ―「書く・まとめる・調べる」の定型業務から

「AIで何ができるか」を抽象的に考えると、かえって手が止まります。そこで弊社では、日々の業務を具体的なシナリオに落として一緒に棚卸しします。ここでは代表的なものを、性質の近い3つのグループに分けてご紹介します。いずれも既存のAIサービスで実現できる、非エンジニア向けの使い方です。

① 文書・帳票・コミュニケーションを「書く」

業務いまの課題AIで変わること
定型レポートの作成週報・月報を毎回手作業で作り、1〜2時間かかる元データを渡すだけでAIが下書き、人は確認と微調整だけ
見積書・発注書の下書き毎回テンプレートに手入力し、転記ミスが起きやすい要点を伝えるだけで定型書式に沿った下書きを作成
メールの下書き・定型返信似た内容のメールを毎回一から書いている要点を伝えるだけで丁寧な文面をAIが下書き
議事録の作成・要約メモ係が必要で、清書と共有に時間がかかる音声から自動で文字起こしし、要約してすぐ共有

② 社内の知識と問い合わせに「答える」

業務いまの課題AIで変わること
社内Q&A・マニュアル検索規程や資料が分散し、探すのに時間がかかる文書を読み込ませ「締め日は?」に即回答
問い合わせの一次対応定型的な問い合わせ対応に工数がかかるよくある質問を学習したAIが一次回答を自動化
新人の質問対応先輩が同じ質問に何度も対応し、育成に時間を取られる手順を覚えたAIが新人の質問にその都度回答
多言語の社内文書の翻訳英語・中国語資料の翻訳に時間と外注費がかかる貼るだけで自然な翻訳、社内で完結しコストを削減

③ 数字と専門文書を「読み解く」

業務いまの課題AIで変わること
Excel集計・加工の自動化集計・並べ替え・書式を手作業で行い、属人化しがち「取引先ごとに集計して」と伝えるだけで誰でも同じ結果
取引先・商品情報の整理・分類表記がバラバラで、分類が手作業で抜け漏れが出る業種・地域などでAIが自動分類・タグ付け
売上・在庫の異常検知・要約増減を目視でチェックし、異常の気づきが遅れる変動・異常値を自動で検知し、要約を提示
契約書・取引条件の確認長文の契約確認に時間がかかり、条項を見落とす重要条項やリスクをAIが抽出して要約

ポイントは、いきなり全部をやろうとしないことです。「いま最も時間がかかっている定型業務」を1つだけ選び、そこから始める。これが遠回りに見えて最短の進め方です。

ツールはどう選ぶか ― 今の環境に合わせ、使いやすいものから

AIツールは種類が多く、比較記事を読むほど迷います。しかし非エンジニアが中心となって使う場合、選び方の原則はシンプルです。いま使っているOA環境(Microsoft 365 か Google か)に統合できるものを第一候補にすること。これをまず意識するとよいと思います。すでにMicrosoft 365をお使いなら、Word・Excel・Teams・Outlookにそのまま溶け込むMicrosoft 365 Copilotが最有力になります。また各ツールとも、指示すれば自律的に作業を進める「AIエージェント」機能の提供・強化を競っています。下表は、変わりにくい「位置づけ・統合先」で整理したものです。

ツール位置づけ・統合先/エージェント機能こんな環境に
Microsoft 365 CopilotMicrosoft 365(Word・Excel・Teams・Outlook)に統合されたAI。多工程を自律実行するエージェント「Copilot Cowork」を提供Microsoft 365をお使いの企業
ChatGPT Business特定のOA環境に依存しない独立系の汎用AI。業務ワークフローを担うエージェント「ChatGPT Work」を提供特定の製品に縛られず幅広く使いたい企業
Google Gemini for WorkspaceGoogle Workspace(Gmail・スプレッドシート等)に統合されたAI。常時稼働の自律エージェント「Gemini Spark」を提供Google Workspaceをお使いの企業
Anthropic Claude独立系の汎用AI(長文の読み込みに向くとされる)。PC上の作業を代行するエージェント「Claude Cowork」を提供専門文書の読み込みが多い企業

※ 各ツールの機能は日々更新され、いずれも守備範囲を広げています。特定の作業の得意・不得意で選ぶより、上表の「統合先」と、次章で述べる企業向けプランの有無で選ぶのが失敗しにくい選び方です。最新の機能・価格は各社の公式情報をご確認ください。(本項の製品名・提供形態は2026年7月時点の情報です。)

費用は、これらの多くが1人あたり月額数千円程度の追加ライセンスで始められます(プランや為替により変わるため、最新の価格は各社でご確認ください)。24時間無人で自律実行するような高度な使い方は別途の作り込みが必要になりますが、多くの企業にとっての第一歩は、月額のサブスクリプションで今日から使えるものの中にあります。

なお「社内データを海外企業のサーバーに送りたくない」「日本語や日本の商習慣に強いAIがよい」という場合は、NTTのtsuzumi、NECのcotomi、富士通のTakane、そのほかELYZA・PLaMo・Sakana AIといった国産AIも選択肢になります。提供形態はさまざまで、ブラウザで手軽に試せる無料チャットを持つもの(Sakana Chat、PLaMoなど)もあれば、企業向けのAPI・オンプレミス提供が中心のもの(tsuzumi・Takane・cotomiなど)もあります。いずれにせよ、社内Q&Aやメール転記のように業務システムへ組み込んで使うには、API連携や自社環境での構築・保守が別途必要になる点は共通です。

最重要 ― 社外に出してよい情報/いけない情報

AI活用のご相談で、ツール選び以上に大切なのがこのテーマです。「そのデータをAIに読み込ませてよいのか」という判断は、情報の性質で整理できます。まずは一般的な線引きを押さえましょう。

とはいえ「機密は一切AIに触らせない」と決めてしまうと、AI活用の幅は大きく狭まります。そこで、機密を扱う業務でも安全に進めるための現実的な方法が3つあります。

①のマスキング・匿名化の選択肢は扱う人の意識に依存してしまう部分があるため、なかなか業務として浸透させることが難しいという声も多くあります。このためまずは②企業向けプランを選ぶことが最重要です。企業向けプランで活用しつつ、よりセキュアな環境でデータを扱う必要性がある場合に③(閉域)との組み合わせを行う流れがよいと考えます。

「クラウドAIは危険」は誤解 ― 無料プランと企業向けプランは別物

「クラウドのAIは危ない」という不安をよく伺いますが、その多くは無料・個人プランと企業向けプランを混同していることから来ています。同じ「ChatGPT」でも、個人の無料アカウントと法人プランでは契約内容がまったく異なります。

項目無料・個人プラン企業向けプラン
入力データの学習利用原則あり(設定で除外できる場合も)契約上禁止・保証される
データの暗号化基本的な通信の暗号化転送中・保存中とも暗号化
コンプライアンス認証特になしSOC 2 / ISO 27001 / GDPR など
データの分離共有環境専用テナント/論理的に分離
データの保持・削除サービス任せ契約で明示・削除を要求できる

Microsoft 365 Copilot、ChatGPT の法人プラン、Claude、Gemini for Workspace はいずれも、会話やファイルをAIの学習に使わないことを明示しています。安全に使う鍵は、「企業向けプランを選ぶこと」と「社内ルールを整えること」の両輪です。具体的には、業務では必ず会社アカウントを使う、何を入力してよいかのガイドラインを作る、利用状況を可視化する――この3点を最初に固めておくと安心です。弊社ではこうした社内ガイドラインの策定もあわせてご支援しています。

さらに安全な選択肢 ― 閉域(自社環境)で動かす

個人情報や営業秘密をマスキングせずそのまま扱いたい、あるいは社内規程や業界規制で社外送信そのものが禁じられている――そうした場合の答えが「閉域(自社環境)で動かす」構成です。Azure OpenAI Service や国産AIを自社のネットワーク内に展開し、データが社外に一切出ないようにします。企業向けクラウドと閉域は、次のように性格が分かれます。

比較軸企業向けクラウド閉域(自社環境)
データの行き先外部のAIサービス(契約で保護)自社環境のみ
セキュリティ水準高い最高
導入のしやすさすぐ始められる専門知識・工数が必要
コスト月額サブスク(初期費用は小さい)初期構築+継続運用の費用
モデルの最新性常に最新版更新は別途対応

多くの企業は、まず企業向けクラウドで効果を確かめ、必要に応じて閉域へ段階移行します。弊社が提供するお客様専用のAI環境「AIプライベート」シリーズ(帳票入力を自動化するAI-OCRプライベート、電話対応を自動化するAI-Voiceプライベート)は、この考え方を具体的な業務に落とし込んだものです。データを外に出さずに、帳票や電話の受注業務そのものを自動化します。

成否を分けるのは、ツールより「データの準備」

ここが、弊社がご相談の場で最も強調している点です。AIは「与えられたデータ」しか使えません。どれほど高性能なAIでも、社内の情報が整理されていなければ「何も知らないAI」になり、期待外れに終わります。逆に、ごく標準的なAIでも社内データがきちんと準備されていれば「社内を何でも知るAI」として高い効果を発揮します。成否はツール選びより、データの準備で決まります。

多くの企業では、データがこんな状態になっています――部署ごとに別のフォルダやシステムに分断されている(サイロ化)、Excel・PDF・紙・メールと形式がバラバラ、ファイル名でしか探せず中身で検索できない、古い版と最新版が混在している、重要情報が特定の人の頭の中や個人PCにしかない。これらを次の4ステップで整えていきます。

RAGとは、AIに「検索機能」を持たせる仕組みのことです。社内文書を登録しておけば、AIが質問に対して関連する箇所を瞬時に探し出して回答します。ここで前のステップ――紙やFAX、画像で届く帳票をデジタル化する工程――が効いてきます。弊社のAI-OCRが、この「整形・構造化」を担う役割を果たします。

AI活用はどこへ向かうか ― 人とAIの関わり方の変化

もう少し先の話もしておきます。人とAIの関わり方は、弊社の見立てでは次のように段階を追って進んでいきます。いまはちょうど、「人が毎回確認する」段階から「人が監視する」段階へ移り変わる分岐点にあります。今からAI活用に取り組むのは、この潮目に乗る絶好のタイミングだと弊社は考えています。

この「人が監視する段階(Human on the loop)」を具体的な業務に当てはめると、次のようなイメージになります。AIが複数の道具をつないで作業を進め、人は要所で内容を確認して承認する。受注業務を例にすると、こうした流れです。

誤解のないように

先の段階に進むことは、「人を外すこと」が目的ではありません。承認ゲートを設ける、例外時には必ず人が介入する――こうしたガバナンス(統制)の設計が前提です。AIに任せきりにせず、要所で人が確認する仕組みをつくる。これはAI-OCRやAI-Voiceで弊社が徹底している「AIが下書きし、人が確認する二段構え」と同じ考え方です。

進め方 ― 小さく始めて、効果を確かめながら広げる

最後に、弊社がおすすめする導入の進め方です。いきなり全社導入はしません。小さく始めて、効果を確かめながら広げる。これが無駄な投資を避ける確実な道です。

大切なのは、フェーズ1が無料相談から始まることです。効果が見えてから次に進むので、無駄な投資が発生しません。弊社はこの「プルーフ・ファースト(まず試して、納得してから進める)」の考え方を大切にしています。要件が固まりきっていない「AIで何ができるか模索中」という段階からご一緒できるのが、業界歴20年でインフラ・Microsoft 365・Azureに深く携わってきた弊社の強みです。

よくあるご質問

こちらをクリックして「よくある質問」を表示

プログラミングの知識がなくても始められますか?

始められます。本コラムでご紹介した使い方は、いずれも言葉で指示するだけの非エンジニア向けのものです。ChatGPTやMicrosoft 365 Copilotなど、既存のAIサービスをそのまま使えば特別な開発は不要です。

独自のAIツールを自社で開発する必要はありますか?

多くの場合、必要ありません。ChatGPTやGeminiなどの既存サービスの活用でまかなえます。ただし、機密データを社外に出さずに扱う閉域構成や、国産AIを業務システムに組み込む場合には、別途の構築が必要になることがあります。

機密情報を扱う業務では、AIは使えないのでしょうか?

使えます。マスキング(匿名化)、学習に使わない企業向けプランの選択、データを社外に出さない閉域構成、という3つの方法を組み合わせることで、機密を守りながら活用できます。マスキングは扱う人の意識に依存するため、まずは企業向けプランを選ぶところから固めるのがおすすめです。

何から手をつければよいか分かりません。どう相談すればよいですか?

「いま最も時間がかかっている定型業務」を1つ思い浮かべていただくところからで十分です。弊社は要件が固まっていない段階からご一緒し、業務の棚卸しとツール選定を無料相談から支援します。まずはお気軽にご連絡ください。

AIエージェント活用の始め方のご相談・無料相談のご希望は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。「AIで何ができるか模索中」という段階からご一緒します。

本コラムでご紹介した内容に加え、機密を守りながら安全に使うための考え方(企業向けプラン・閉域・社内ルール)まで、実務に沿って1冊にまとめたホワイトペーパー「企業におけるAIエージェント活用の始め方」(無料ダウンロード)もご用意しています。活用シナリオ15選・ツールとエージェント製品の選び方・データ準備・90日の導入ロードマップも収録しています。

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