AI-OCRの費用・料金|Document Intelligenceの単価と総額の考え方
AI-OCRの料金を調べると、1ページあたり数円という単価が見つかります。ただ、その単価だけで導入後の総額は決まりません。
AI-OCRの費用は、読み取りの従量課金に、初期構築・連携と月額運用、そして読み取り後に残る確認・修正の人件費を合わせた総額で考える必要があります。本記事は、Azure AI Document Intelligence の公式単価をもとに、AI-OCRの費用の決まり方と、見積もりで見落としやすい点を解説します。
本記事は、「AI-OCRとは」と、共有SaaSとお客様専用構築の違いを整理した「AI-OCRサービスの比較」の続編です。料金のかたちの違いは比較の記事で扱ったため、ここでは単価の読み方と、総額の見積もり方を中心に説明します。
目次
株式会社ロクシアシステムズは、福岡と東京を拠点に、全国のお客様へ Microsoft 365・Azure の導入支援と、AIの業務活用(AIプライベート)の支援を提供しているIT企業です。また、お客様専用のセキュアなAI基盤SaaSサービス「AIプライベート」シリーズとして、帳票の読み取りからシステム入力までを自動化する「AI-OCRプライベート」も提供しています。
AI-OCRの費用は「読み取り単価」だけでは決まらない
AI-OCRの読み取りそのものの料金は、多くの場合、処理したページ数に応じて決まります。たとえば Azure AI Document Intelligence で請求書などの事前構築済みモデルを使うと、1ページあたり約1.6円です(単価は後の章で詳しく紹介します)。月3,000ページを処理しても、読み取りの料金は約4,780円にとどまります。
一方で、AI-OCRを業務で使うには、読み取った値を基幹システムへ登録する仕組みや、その環境を運用する体制が必要です。さらに、読み取り後に人が確認・修正する時間が残ります。仮に1枚あたり30秒の確認が残れば、月3,000枚で25時間になります。この時間は請求書には載りませんが、導入の効果と費用を考えるうえでは欠かせない要素です。
つまり、AI-OCRの費用を比べるときは、読み取りの単価や月額の安さではなく、確認・修正まで含めた総額で見る必要があります。
費用を構成する3つの要素と、見えにくい人件費
AI-OCRの総額は、請求書に載る3つの費用と、請求書に載らない確認・修正の人件費に分けて考えると整理しやすくなります。

| 要素 | 主な中身 | かかり方 | 見積もりの鍵 |
|---|---|---|---|
| 解析の従量課金 | 読み取り(ページ単位)と、生成AIによる判断・構造化(トークン単位)の利用料 | 処理した量に比例 | 帳票ごとの月間枚数、1枚あたりのページ数、使う読み取り方式 |
| 初期構築・連携 | 環境の設計・構築、帳票ごとの読み取り設定や学習、基幹システムへの登録連携 | 導入時に一度 | 帳票の種類の数、連携先のシステムと方式 |
| 月額運用 | 運用保守・監視、精度の改善や様式追加への対応、データの保存などの基盤費用 | 毎月ほぼ一定 | 運用で求める対応の範囲 |
| 確認・修正の人件費 | 要確認になった値の確認、誤読の修正、読めない帳票や訂正などの例外処理 | 枚数と確認に残る時間で決まる | 自動で確定できる割合(実際の帳票で測る) |
このうち最も見積もりが難しいのが、確認・修正の人件費です。どれだけの値を自動で確定でき、どれだけが人の確認に回るかは、帳票の品質や手書きの有無、確認のルールによって変わります。「AI-OCRとは」でも触れたとおり、導入後に残る確認の時間は、効果を決める最大の変数です。確認をどう設計するかは「手書き帳票のAI-OCR|読める範囲と確認の設計」で詳しく解説しています。
共有SaaS型とお客様専用型で、費用の出方はどう違うか
AI-OCRサービスは、多くの企業が同じクラウドサービスを使う「共有SaaS型」と、自社が契約するクラウドの中に専用の環境を構築する「お客様専用型」に大きく分かれます。同じ4つの要素でも、費用の出方が異なります。
| 観点 | 共有SaaS型 | お客様専用型 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 小さい。契約すればすぐに始められる | 専用環境の構築と連携の費用がかかる |
| 月々の費用 | 月額の枚数課金が中心で、枚数が増えるほど積み上がる | 月額の運用費に、解析の従量課金(利用量に応じた実費)が加わる |
| 1枚あたりの変動費 | 相対的に大きい | 相対的に小さく設計しやすい |
| 総額を抑えやすい場面 | 処理する枚数が少ない、標準的な帳票で足りる | 処理する枚数が多い、帳票や基幹連携の作り込みが必要、データの置き場所を自社で管理したい |

2つの型は「固定費が小さく枚数に比例する料金」と「固定費に、低い変動費が加わる料金」の関係にあります。そのため、処理する枚数が少ないうちは共有SaaS型が安く、枚数が増えるとお客様専用型のほうが安くなる分岐点が現れます。月に数十枚程度であれば、専用の環境を構築するより、共有SaaS型のほうが総額を抑えやすいでしょう。どちらを選ぶかの判断軸は「AI-OCRサービスの比較」で詳しく解説しています。
Azure AI Document Intelligence の料金|公式単価の読み方
ここからは、AI-OCRの読み取りを担う代表的なサービスである「Azure AI Document Intelligence」の料金を見ていきます。Microsoftの説明では、料金は月ごとに、使ったモデルの種類と解析したページ数によって計算されます。主な区分の単価は次のとおりです。
| 区分 | 主な用途 | 1,000ページあたり | 1ページ換算 |
|---|---|---|---|
| 読み取り(Read) | 文字とその位置を取り出す | 238.98円 (100万ページを超える分は95.592円) | 約0.24円 |
| 事前構築済みモデル | レイアウト(表・見出しの構造)や、請求書・領収書などの定番項目を取り出す | 1,593.20円 | 約1.6円 |
| カスタム抽出 | 自社の帳票に合わせて学習させたモデルで項目を取り出す | 4,779.60円 | 約4.8円 |
| カスタム分類 | 帳票の種類を見分けて振り分ける | 477.96円 | 約0.48円 |
| アドオン(高解像度・フォント・数式) | 大判の図面の細かな文字などを読む追加機能 | 955.92円 | 約0.96円 |
| クエリフィールド | 学習なしで、取り出したい項目名を指定して追加で取り出す | 1,593.20円 | 約1.6円 |
単価は、Azure公式の価格情報(東日本リージョン・従量課金・執筆時点)です。1ページ換算は、1,000ページあたりの単価から算出しています。バーコードの読み取り、言語の検出、キーと値のペアの抽出は、追加料金のかからない機能です。価格は改定や為替によって変わるため、最新の金額はAzureの公式価格ページと料金計算ツールでご確認ください。
同じ枚数でも、読み取り方式によって料金は大きく変わります。月3,000ページを処理する場合で比べると、次のようになります。
| 読み取り方式(月3,000ページ) | 読み取りの料金(概算) |
|---|---|
| 読み取り(Read) | 約720円 |
| 事前構築済みモデル | 約4,780円 |
| カスタム抽出 | 約14,340円 |
すべての帳票をカスタム抽出で読む必要はありません。文字さえ取れればよい帳票は読み取り(Read)、表の構造が要る帳票はレイアウト、自社独自の様式で項目を正確に取りたい帳票はカスタム抽出、というように、帳票ごとに方式を選ぶことで読み取りの料金を抑えられます。様式ごとにモデルを振り分ける考え方は「カスタムAI-OCRの精度を継続的に高める仕組み」で解説しています。
無料で使える範囲
Document Intelligence には、月500ページまで無料で使える無料プラン(F0)があります。ただし、1回の解析で読み取るのは先頭の2ページまで、ファイルサイズは4MBまでといった制限があります。機能を試したり、検証したりする用途に向いたプランで、業務での本格的な利用は有料プラン(S0)が前提になります。
カスタムモデルの学習にかかる料金
自社の帳票を学習させるカスタムモデルは、テンプレート方式なら学習が無料です。ニューラル方式は毎月10時間まで無料で学習でき、10時間を超えた分は1時間あたり477.96円がかかります。なお、ラベルを付けていない学習データを使うと、ラベルの自動生成にレイアウトモデルが使われ、その分の解析料金が発生します。
ページの数え方
- PDFとTIFFは、1ページ(1画像)を1ページとして数える
- ページの範囲を指定しなければ、ファイル内の全ページが解析の対象になる
- Excelはワークシート1枚、PowerPointはスライド1枚を1ページとして数える(読み取り・レイアウトの場合)
- WordやHTMLは、3,000文字ごとに1ページとして数える
大量に処理する場合
大量の文書を処理する場合に向けて、月額の固定料金で一定のページ数を利用できる「コミットメントレベル」も用意されています。上限を超えた分は別の単価で課金されます。処理量が安定して多い場合は、従量課金と比べて検討する価値があります。
生成AIを組み合わせる場合の費用
最近のAI-OCRでは、読み取った値の妥当性を判断したり、項目を整理して構造化したりする工程に生成AIを組み合わせることが増えています。この場合、読み取りの料金とは別に、生成AIの利用料がかかります。
- 料金はトークン単位
Azure OpenAI の言語モデルは、100万トークンあたりの単価で、入力と出力で単価が分かれています。帳票1枚ごとにAIへ渡す文字の量と、AIに返させる量で費用が決まります。 - デプロイの種類で単価と処理場所が変わる
グローバル、データゾーン、リージョンといったデプロイの種類ごとに単価が異なり、推論が行われる場所も変わります。費用だけでなく、データの取り扱いの要件とあわせて選ぶ必要があります。 - 処理量が多い場合の選択肢
処理能力を月単位・年単位で予約する方式や、24時間以内に結果を返す代わりに割安になるバッチ処理も用意されています。
生成AIの費用は、使い方の設計で大きく変わります。たとえば、帳票の全文ではなく判断に必要な部分だけを渡す、疑わしい値だけをAIに確認させる、返させる内容を必要な項目に絞る、といった工夫で、1枚あたりのトークン量を抑えられます。生成AIで文書を構造化する Azure Content Understanding の料金の考え方は、「Azure Content Understanding とは」で解説しています。
見積もりで見落としやすいコスト
単価と枚数だけで見積もると、導入後に「思ったより費用がかかる」「思ったより手間が減らない」となりがちです。見落としやすいのは次のような点です。
- 読み取らなくてよいページまで解析している
ページの範囲を指定しないと、表紙や送付状、白紙のページも解析の対象になります。帳票の1枚目だけが必要なら、範囲を指定するだけで料金が変わります。 - 学習データの準備にかかる手間と料金
カスタムモデルの学習には、実際の帳票を集めてラベルを付ける作業が必要です。ラベルの自動生成を使うと、その分の解析料金もかかります。 - 様式の追加と、モデルの作り直し
取引先が増えたり、帳票の様式が変わったりすると、モデルの追加や学習のやり直しが発生します。Document Intelligence には既存モデルを部分的に再学習する操作はなく、学習するたびに新しいモデルが作られます。 - 例外処理の時間
読めない画像、二重線での訂正、同じ注文の二重送信や変更の注文書など、決まった流れに乗らない帳票への対応です。件数は少なくても、1件あたりの時間は長くなりがちです。 - 検証段階の解析
導入前の検証では、同じ帳票を設定を変えながら何度も解析します。本番の枚数とは別に、この分も見込んでおくと安心です。
AI-OCRの費用を見積もる手順
ここまでの要素を、見積もりの手順として並べ直すと次のようになります。
- 帳票ごとに、月間の枚数とページ数を数える
平均だけでなく、繁忙期の最大値も押さえます。 - 帳票ごとに読み取り方式を決め、読み取りの料金を概算する
読み取り(Read)、事前構築済みモデル、カスタム抽出のどれを使うかを決め、単価表とページ数から計算します。生成AIを使う場合は、1枚あたりのトークン量の見込みも加えます。 - 実際の帳票で試し、確認に残る時間を測る
自動で確定できる割合と、1枚あたりの確認時間を実測し、確認・修正の人件費を見積もります。 - 構築・連携・運用の範囲を決める
帳票の種類の数、連携先のシステム、運用で求める対応の範囲を決め、初期構築と月額運用の費用を見積もります。 - 稼働後は、実績で見直す
Azureポータルでは、リソースの「Processed Pages」の指標で、処理したページ数をモデルごとに確認できます。この実績を料金計算ツールに入れて、試算を更新します。
この章の要点
- 読み取りの料金は「枚数×ページ数×読み取り方式の単価」で概算できる
- 総額の見積もりには、確認・修正に残る時間と、構築・連携・運用の範囲を必ず含める
- 確認に残る時間は机上で決めず、実際の帳票で測る
弊社の費用の考え方|実際の帳票で総額を試算する
弊社の「AI-OCRプライベート」は、お客様専用のAzure環境に構築するAI-OCRです。費用は、初期構築費と月額の運用費に、解析の従量課金が加わる形になります。
- 解析の料金は、利用量に応じた実費
読み取りや生成AIの利用料は、お客様専用の環境で実際に処理した量に応じて発生します。 - 帳票ごとに読み取り方式を選ぶ
すべてを高機能なモデルで読むのではなく、帳票の性質に合った方式を選び、読み取りの料金と精度のバランスをとります。 - 確認の時間まで含めて試算する
無料トライアルで実際の帳票を読み取り、自動で確定できる割合と確認に残る時間を確かめたうえで、総額の試算をお出しします。 - 共有SaaS型が合う場合は、そうお伝えする
処理する枚数が少なく、標準的な帳票で足りる場合は、共有SaaS型のほうが総額を抑えやすいことがあります。その場合は、率直にお伝えします。
AI-OCRの総額は、帳票の枚数や種類、連携先、確認の体制によって変わります。一律の料金表ではなく、お客様の条件に合わせて試算することを大切にしています。サービスの詳細は「AI-OCRプライベート」を、お試しのお申し込みは「無料トライアル」をご覧ください。
よくあるご質問
こちらをクリックして「よくある質問」を表示
AI-OCRは無料で使えますか?
Azure AI Document Intelligence には、月500ページまで無料で使える無料プランがあります。ただし1回の解析は先頭の2ページまで、ファイルサイズは4MBまでといった制限があり、機能を試す・検証する用途向けです。業務で本格的に使う場合は有料プランが前提になります。弊社の無料トライアルでは、お客様の実際の帳票で、読み取りから確認の流れまでをお確かめいただけます。
帳票1枚あたり、いくらかかりますか?
読み取りの料金は、方式とページ数で変わります。Azure AI Document Intelligence の東日本リージョンの単価(執筆時点)では、1ページあたり、読み取り(Read)で約0.24円、事前構築済みモデルで約1.6円、カスタム抽出で約4.8円です。ただし、実際の総額には初期構築・連携、月額運用、確認・修正の人件費が加わるため、1枚あたりの総額は枚数と要件によって変わります。
カスタムモデルの学習に費用はかかりますか?
テンプレート方式の学習は無料です。ニューラル方式は毎月10時間まで無料で、超えた分は学習時間に応じて課金されます。ラベルを付けていない学習データを使うと、ラベルの自動生成に解析の料金がかかります。料金とは別に、学習用の帳票を集めてラベルを付ける作業の時間も見込んでおく必要があります。
共有SaaSとお客様専用の構築では、どちらが安いですか?
処理する枚数によって逆転します。枚数が少ないうちは初期費用の小さい共有SaaSが安く、枚数が増えると、固定費がならされるお客様専用の構築のほうが安くなる分岐点が現れます。どちらの場合も、読み取り後に残る確認・修正の人件費まで含めた総額で比べることが大切です。
見積もりを依頼するとき、何を用意すればよいですか?
対象となる帳票の種類と見本、種類ごとの月間枚数とページ数(繁忙期の最大値も)、読み取った値を登録するシステムと取り込み方法、現在の確認の体制がわかると、精度の高い試算ができます。見本に機密情報が含まれる場合は、お預かりの方法を事前にご相談ください。
生成AIを使うと、費用は大きく増えますか?
使い方の設計で変わります。生成AIの料金はAIに渡す量と返させる量に応じたトークン単位で、判断に必要な部分だけを渡す、疑わしい値だけを確認させるといった工夫で抑えられます。単価はモデルやデプロイの種類で異なるため、想定する枚数と使い方を決めたうえで試算します。
AI-OCRの費用の見積もりや、いまお使いの帳票でどの読み取り方式が合うかのご相談は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。実際の帳票を拝見したうえで、読み取りの料金と、確認に残る時間を含めた総額の考え方をお伝えします。
参考(一次情報):Azure「Azure Document Intelligence の価格」/Azure Retail Prices API(東日本リージョンの小売価格)/Microsoft Learn「Service quotas and limits」(課金の単位・ページの数え方・無料プランの制限)/「Document Intelligence FAQ」(学習・ラベル自動生成の課金)/「Add-on capabilities」(アドオン機能の有料・無料)/「Check my usage and estimate the cost」(処理ページ数の確認と試算)/Azure「Azure OpenAI の価格」(トークン単位の課金・デプロイの種類)
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