AI-OCRサービスの比較|共有SaaSと顧客専用構築、どちらを選ぶべきか

AI-OCRサービスは、大きく「共有SaaS型」と「顧客専用構築型」の2つに分かれます。機能の細かな優劣ではなく、選定を分けるいちばんの軸は「読み取った帳票データが、どこへ送られて処理されるか」です。この記事では、その2つの型を公平に比較し、どちらを選ぶべきかを判断できるように整理します。

株式会社ロクシアシステムズは、福岡と東京を拠点に、全国のお客様へ顧客専用構築型のAI-OCR導入支援を提供しているIT企業です。本記事は、AI-OCRの全体像を解説した「AI-OCRとは|帳票の手入力をなくす仕組みと、失敗しない選び方」の子記事にあたります。親記事で触れた「選び方」を、判断フローチャート・10の比較軸・料金構造の考え方まで掘り下げて解説します。

先にお断りしておきます。本記事は自社サービスへ一方的に誘導するものではありません。共有SaaSが合理的な場面では、共有SaaSをおすすめします。そのうえで、顧客専用構築でなければ解けない課題がどこにあるのかを、正直にお伝えします。競合製品の実名は挙げず、「型」の違いとして公平に比較します。

AI-OCRサービスの2つの提供形態

市場に出ているAI-OCRサービスは、提供のされ方で2つに整理できます。同じ「AI-OCR」でも、データの置き場所・費用の考え方・作り込める範囲が根本から異なります。

共有SaaS型|提供元のクラウドを、みんなで使う

提供元が用意した1つのクラウドサービスを、多くの利用企業が共同で使う形態です。契約すればすぐに使い始められ、料金は月額の枚数課金が中心です。帳票をアップロードすると、提供元のクラウドへデータが送信されて処理されます。設定やカスタマイズは、提供元が用意した範囲の中で行います。手軽さと初期費用の低さが最大の利点です。

顧客専用構築型|自社の環境の中に、専用で建てる

自社が契約するクラウド(弊社の場合はお客様のAzure環境)の中に、その企業専用のAI-OCRを構築する形態です。帳票データは自社の環境から外に出ません。自社帳票を学習させた専用モデル、業務ルールに沿った確認・修正、基幹システムへの登録までを自由に設計できます。初期構築費が必要になる一方で、データ主権と作り込みの自由度が得られます。弊社が「AI-OCRプライベート」として提供しているのはこの形態です。

どちらを選ぶか|判断フローチャート

迷ったときは、機能を1つずつ比べる前に、次の3つの問いに順番に答えてみてください。最初の分かれ目は「そのデータを社外のクラウドに出してよいか」です。

  1. Q1. 帳票に社外へ出しにくい情報を含むか
    取引先名・単価・個人情報などを含む帳票は、情報システム部門や取引先から「社外のクラウドに送るのか」と問われがちです。含むなら顧客専用構築型が安全です。
  2. Q2. 自社固有の様式か、または基幹連携が要るか
    取引先ごとに違う独自帳票を読ませたい、あるいは読み取った後に基幹システムへ自動登録したい場合は、作り込みの自由度が要ります。顧客専用構築型が向きます。
  3. Q3. 少量で、まず手軽に試したいか
    ここまでがいずれも「いいえ」で、対象が月数十枚程度・汎用的な様式で、すぐに使い始めたいなら、共有SaaS型でも十分なことがあります。

このフローで顧客専用構築型に行き着く企業は、「データを外に出せない」「様式が自社固有」「基幹連携が前提」という条件を1つでも抱えています。逆に、そのどれにも当てはまらない汎用的な使い方であれば、共有SaaSのほうが早くて安く済みます。優劣ではなく、条件でおのずと決まるという点が大切です。

10の軸で比較する

2つの型を、実務で効いてくる10の観点で並べます。導入時の手軽さだけでなく、運用が続いた後・やめるときに効いてくる観点まで含めて見ておくことをおすすめします。

比較の観点共有SaaS型顧客専用構築型(AI-OCRプライベート)
データの行き先 提供元のクラウドへ送信 自社のAzure環境内に留まる
導入スピード 契約すればすぐ使える 専用環境の構築が必要(IaC自動化で短期化)
料金構造(少量時) 月額の枚数課金が中心(多量時) 初期構築費+月額運用+従量
カスタムの自由度 提供元の設定範囲まで 様式・検証ルールを自由に設計できる
基幹システム連携 用意された連携方式の範囲 CSV/APIなど自由に設計できる
手書き・スマホ撮影 提供機能の範囲に依存 手書き・HEIF写真にそのまま対応
確認・修正の作り込み 提供される画面まで 業務ルールに沿った検証を組み込める
撤退・乗り換え時のデータ 提供元に預けた分の扱いを要確認 自社環境内にあり主導権を保てる
セキュリティ監査・質問票 提供元の認証・監査報告に依存 自社のAzure基盤の統制として回答できる
向いている企業汎用様式・小規模・すぐ試したい独自様式・機密帳票・基幹連携が前提の中小BtoB

◎=特に優位 〇=対応・良好 △=限定的・条件つき。◎の数の多さで選ぶものではなく、自社が重視する軸で見てください。導入スピードと初期費用の小ささでは共有SaaSが優れます。

とくに見落とされやすいのが、下から2つの行です。導入時は誰もが精度と月額に目が向きますが、「やめるとき」「監査に問われたとき」にデータの主導権がどちらにあるかは、扱う情報の機密性が高い企業ほど後から効いてきます。なお、セキュリティの土台という点では、顧客専用構築型はMicrosoft Azureの取得済み認証(ISO/IEC 27001・27017・27018など)を自社の統制の一部として活用できます。

料金構造の考え方

2つの型は、料金の「かたち」が違います。金額そのものは帳票の枚数と業務要件で変わるため、ここでは費用構造の考え方を整理します。具体的な単価は、実際の帳票を拝見して試算するのが正確です。

共有SaaS型の料金構造

共有SaaS型は、初期費用が小さく、月額の枚数課金が中心です。使った分だけ支払うため、少ない枚数なら総額を低く抑えられます。一方で枚数が増えるほど月額が積み上がり、処理量に比例して費用がかさむのが特徴です。

顧客専用構築型の料金構造(二階建て)

顧客専用構築型は、初期構築費+月額運用費+AIの従量課金という二階建てになります。一階が初期構築費(専用環境の設計・構築)、二階が月額の運用費と、解析したページ数に応じたAIの従量課金です。AIの従量課金は使った分だけの実費で、枚数課金の共有SaaSより1枚あたりの変動費は小さく設計しやすい一方、初期構築費という固定費が最初にかかります。

損益分岐の考え方

この2つは「固定費のない従量制(共有SaaS)」と「固定費+低い変動費(顧客専用)」の関係にあります。したがって、処理量が少ないうちは初期費用のない共有SaaSが安く、処理量が一定を超えると固定費が枚数でならされ、変動費の低い顧客専用のほうが安くなる分岐点が現れます。枚数が多いほど顧客専用が有利になる、という関係です。

費用を比べるときの注意

料金を月額だけで比べると、判断を誤ります。比べるべきは「AI-OCRの利用料」だけではなく、そこに残る確認・修正の人件費まで含めた総コストです。読み取り後の確認工数が多く残る設計では、月額が安くても現場の負担は下がりません。弊社が無料PoCの段階で実帳票をお預かりして試算をお出ししているのは、この「残る工数」まで含めた実数を出すためです。

共有SaaSが合理的な場面

公平にお伝えします。次のような場面では、共有SaaSが正解です。ここで無理に顧客専用構築を選ぶ必要はありません。

  • 処理する枚数が少ない
    月に数十枚程度なら、初期構築費をかけて専用環境を建てるより、枚数課金のほうが総額を抑えられます。
  • 帳票が汎用的な様式
    一般的な請求書・領収書など、提供元が最初から対応している様式なら、設定の手間なく使えます。
  • 機密性が高くない
    社外のクラウドに送っても差し支えない帳票であれば、データの行き先は障壁になりません。
  • とにかく今すぐ試したい
    環境構築を待たずに、今日から使い始めたい場合に向きます。

弊社は、こうした場面で顧客専用構築を売り込むことはしません。合わない道具を勧めるのは、伴走者の仕事ではないからです。

顧客専用構築が効く場面

一方で、次のいずれかに当てはまる企業では、共有SaaSでは越えられない壁が出てきます。ここが顧客専用構築型の出番です。

  • データを社外に出せない
    取引先名・単価・個人情報を含む帳票を扱う。情報システム部門や取引先の情報管理規程が、外部クラウドへの送信を認めない。
  • 様式が自社固有
    取引先ごとに異なる独自の注文書や、自社だけで使う管理帳票を読ませたい。汎用の設定範囲では吸収できない。
  • 基幹連携が前提
    読み取って終わりではなく、確定データを販売管理システムや基幹システムへ自動登録するところまで繋ぎたい。
  • 確認・修正を業務ルールで固めたい
    信頼度スコアに頼れない以上、「明細に選択肢が2つある=誤読」といった業務固有の検証を組み込みたい。

これらは、取引先にFAX・紙をやめさせられない中小のBtoB事業者に、とくに多く当てはまります。EDIへの移行は取引先の協力が要りますが、AI-OCRは受け取る側の判断だけで完結します。そのうえでデータを自社内に留められる顧客専用構築型は、機密性と自由度の両方を必要とする現場に噛み合います。読み取りそのものではなく確認・修正と基幹登録が本当の難所である点は、親記事の「AI-OCRとは」で詳しく解説しています。

弊社の支援|AI-OCRプライベート

弊社は、Azure AI Document Intelligence を中核とした顧客専用のAI-OCR環境「AI-OCRプライベート(PRiV OCR)」を提供しています。共有SaaSでは解けない、データ主権・独自様式・基幹連携の課題に応える形態です。

  • 顧客専用環境で完結
    お客様のAzureテナント内に構築します。帳票データを外部のSaaS事業者へ預ける必要がありません。
  • 国内リージョンで処理
    東日本(Japan East)リージョンで処理し、データは国内に留まります。
  • 手書き・スマホ撮影に対応
    手書き帳票も、現場でスマートフォンから撮影した写真(HEIF)も、そのまま取り込めます。
  • 難所の2工程まで設計する
    確認・修正の検証ロジックと、基幹システムへの登録までを設計・構築します。読み取って終わりにしません。
  • まず無料で試せる(プルーフファースト)
    実際の帳票で動くプロトタイプを無料でご用意します。精度をご自身の目で確かめてから、導入をご判断いただけます。

よくあるご質問

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共有SaaSと顧客専用構築、結局どちらが安いですか?

処理する枚数によって逆転します。枚数が少ないうちは初期費用のない共有SaaSが安く、枚数が増えると固定費がならされ、変動費の低い顧客専用構築型のほうが安くなる分岐点が現れます。加えて、読み取り後に残る確認・修正の人件費まで含めた総コストで比べることが大切です。実際の分岐点は帳票の枚数と要件によって変わるため、無料PoCで試算をお出ししています。

少ない枚数なら共有SaaSで十分ですか?

多くの場合そうです。月数十枚程度で、汎用的な様式、かつ社外のクラウドに送っても差し支えない帳票であれば、共有SaaSが手軽で合理的です。弊社はこうした場面で顧客専用構築を無理にお勧めすることはありません。データを社外に出せない、様式が自社固有、基幹連携が要る、といった条件が加わったときに顧客専用構築を検討する価値が出ます。

顧客専用構築は導入に時間がかかりませんか?

専用環境を建てる分、共有SaaSの「契約してすぐ」よりは準備が必要です。弊社はこの構築をIaC(コードによる自動化)で行うため、再現性を保ちながら短期間で立ち上げられます。さらに、いきなり本番構築ではなく、まず無料PoCで実帳票を読ませて精度と効果を確認してから本導入に進む流れをとっているため、導入判断のリスクを抑えられます。

顧客専用でもクラウド(Azure)を使うなら、共有SaaSと同じではないですか?

同じではありません。共有SaaSは「提供元が契約した1つのクラウド」を多数の利用企業で共有し、データはその提供元へ送信されます。顧客専用構築型は「お客様自身が契約したAzure環境」の中に専用で構築するため、帳票データはお客様のテナント内に留まり、外部のSaaS事業者へ渡りません。同じクラウド技術でも、契約主体とデータの置き場所が根本的に異なります。

将来、共有SaaSから顧客専用構築へ乗り換えられますか?

乗り換えは可能です。まず共有SaaSで小さく始め、枚数が増えたり機密要件が厳しくなった段階で顧客専用構築へ移す進め方もあります。その際は、これまで蓄積した帳票サンプルを専用モデルの学習に活用できます。将来の乗り換えを見据えるなら、契約時に「解約・移行時のデータの扱い」を確認しておくと安心です。

どちらの型でも、精度は同じですか?

読み取りエンジンの素の精度は、同等の技術基盤を使えば大きくは変わりません。差が出るのは「自社帳票にどこまで合わせ込めるか」と「確認・修正をどこまで作り込めるか」です。顧客専用構築型は、自社帳票を学習させた専用モデルと業務ルールに沿った検証を組み込めるため、実務で使える品質に仕上げやすくなります。精度は帳票を拝見しないと申し上げられないため、弊社では無料PoCで実帳票を読ませてご確認いただいています。

どちらの型が自社に合うか迷われている段階でも構いません。対象帳票を拝見し、共有SaaSと顧客専用構築のどちらが適するかの整理からご一緒します。ご相談・無料トライアルのご希望は、お問い合わせよりお気軽にご連絡ください。

まずは資料で検討したいという方は、AI-OCRプライベートのサービス資料(無料ダウンロード)をご用意しています。導入イメージ・システム構成・進め方をまとめています。

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