Azure Communication Services の提供終了で何が変わるか|影響の見分け方と、期限までの対応策
Azure Communication Services で取得した電話番号の移行先として、Microsoft が「最も近い後継」と位置づける Teams Calling Plan は、日本では販売されていません。
今ある環境は2028年9月30日まで動き続けます。ただし、電話番号の新規受付はすでに止まっており、日本で選べる電話の移行先は Operator Connect か Teams Direct Routing に限られます。電話をAIに受けさせている構成も、AIにつないでいるというだけでは継続の対象になりません。
2026年9月、Microsoft は Azure Communication Services(以下、ACS)の単体での提供を、2028年9月30日で終了すると発表しました。移行の案内は英語の公式ガイドにまとまっていますが、日本の利用者にとって重要な前提のいくつかは、Microsoft Teams の国別の提供状況など別のページと突き合わせないと見えてきません。この記事では、公式ガイドの原文に沿って何が変わるのかを整理したうえで、自社の構成が影響を受けるかどうかの見分け方と、期限までに何をするかを解説します。
目次
株式会社ロクシアシステムズは、福岡と東京を拠点に、全国のお客様へ Microsoft 365・Azure の導入支援と、AIの業務活用(AIプライベート)の支援を提供しているIT企業です。
何が発表されたのか
Microsoft の移行ガイドは、ACS の製品を2つに分けています。1つは「提供終了(Retired)」で、2028年9月30日を過ぎると使えなくなります。もう1つは「破壊的変更(Breaking change)」で、その後も提供は続きますが、Microsoft Teams と連携する用途でしかサポートされなくなり、アプリの改修が必要になります。
| 区分 | 対象 | 2028年9月30日以降 |
|---|---|---|
| 提供終了 | Email、SMS、WhatsApp(Advanced Messaging)、Chat、Rooms、電話番号の提供(Direct Offer)、Direct Routing、Job Router、UI Library | 使えなくなる |
| 破壊的変更 | 通話の SDK(Voice and Video Calling)、Call Automation、音声ストリーミング、通話の録音、字幕、Call Diagnostics | Teams と連携する用途に限ってサポートされる |
ここでいう「Teams と連携する用途」は、Teams Phone extensibility(Teams の電話番号で受けた通話を ACS のアプリで扱う仕組み)、Teams 会議との相互運用、Teams の自動応答・通話キューへの発信の3つです。一方で、Teams、Teams Phone、Teams Phone extensibility そのものと、Microsoft Foundry の音声機能は、影響を受けないサービスとして挙げられています。
| 日付 | 起きること |
|---|---|
| 2026年9月 | 提供終了と破壊的変更の発表 |
| 2026年10月23日 | 新しい顧客は、提供終了の対象サービスに申し込めなくなる |
| 2028年9月30日 | 提供終了の対象が使えなくなり、破壊的変更の対象は Teams と連携する用途だけのサポートになる |

自社の構成は影響を受けるのか
最初に気になるのは、「今動いているものが止まるのか」だと思います。答えは、すぐには止まりません。移行ガイドは、2026年10月23日より前に ACS のリソースを作っている顧客は、移行期間中も既存のリソースと提供終了の対象サービスを使い続けられると書いています。サポート、セキュリティの更新、SLA も期限まで続きます。ただし、新しい機能の開発は約束されておらず、更新は既存の機能の維持と、セキュリティや安定性の修正が中心になります。
そのうえで、影響を受けるかどうかは「ACS を何に使っているか」で決まります。用途ごとに、区分と Microsoft が示す移行先を整理すると次のとおりです。
| 用途 | 区分 | 主な移行先 |
|---|---|---|
| アプリからのメール送信(ACS Email) | 提供終了 | Microsoft 365 High Volume Email(社内宛て)、Exchange Online、他社のメール配信サービス |
| SMS の送受信 | 提供終了 | 他社のサービス(Microsoft の代替は示されていない) |
| ACS で取得した電話番号、ACS の Direct Routing | 提供終了 | Teams Phone extensibility と Teams の電話の接続方法(Calling Plan、Operator Connect、Teams Direct Routing)、他社のサービス |
| 電話を受けて自動で応答する(Call Automation・音声ストリーミング) | 破壊的変更 | Teams Phone extensibility |
| Web アプリでの音声・ビデオ通話(通話の SDK) | 破壊的変更 | Teams 会議との相互運用、他社のサービス |
| アプリ内のチャット | 提供終了 | Microsoft Graph の Teams チャットの API |
他社のサービスとして、移行ガイドは Microsoft Marketplace に掲載されている通信基盤の事業者(Infobip、Telesign など)を挙げています。以降では、日本の利用者が特に判断を誤りやすい、電話番号、電話の移行先、AIによる電話の応答、メール送信の4点を順に説明します。
電話番号の新規受付は、2026年10月23日を待たずに止まっている
2026年10月23日は、提供終了の対象サービス全体への新規の申し込みの締め切りです。電話番号はこれとは別に扱われており、移行ガイドは「2026年9月の発表の後に初めて ACS のリソースを作ったテナントは、電話番号を申請できない」「既存の ACS の電話番号を持たない顧客は、新しい番号を取得できない」と書いています。Azure ポータルには番号を取得する画面が表示されますが、新しく作ったリソースでは操作できない状態になっています。
反対に、発表の前から ACS のリソースと電話番号を持っている顧客は、移行期間中も番号を追加で取得できます。判定はテナントの単位なので、これから新しいテナントで電話の仕組みを作る場合は、ACS の電話番号を前提にした設計は選べないと考えるべきです。
番号を持ち出すときと、片付けるときの順序
ACS の電話番号は、他社の通信事業者へ移すことも、Teams Phone extensibility で使うために Teams へ移すこともできます。Teams へ移す場合は、先に ACS から番号を解放したうえで、Microsoft の電話番号の窓口に移行を依頼します。
片付けの順序にも注意が要ります。移行ガイドは、ACS のリソースを削除する前に電話番号を解放するよう求めています。番号を残したままリソースを削除すると、宙に浮いた番号の料金がかかり続け、止めるにはサポートへの依頼が必要になります。
日本では、移行先の筆頭が使えない
移行ガイドは、ACS で電話番号を取得している顧客に最も近い後継として、Teams Calling Plan(Microsoft が通信事業者として番号と回線を提供する形)を挙げています。ところが、Microsoft Teams の国別の提供状況のページでは、日本は「Calling Plan の購入:不可」です。自動応答や通話キューに割り当てる番号(サービス番号)も、日本では Microsoft から取得できず、日本のサービス番号は音声会議の用途に限られています。
Teams Phone extensibility は、現時点では Teams のリソースアカウントに割り当てたサービス番号でしか使えず、ACS の電話番号をそのまま使うこともできません。そのため日本では、Operator Connect か Teams Direct Routing のどちらかで番号と回線を用意することになります。
| 接続方法 | 日本での扱い | 向いているケースと注意点 |
|---|---|---|
| Teams Calling Plan | 購入できない | ― |
| Operator Connect | 対応する通信事業者があれば使える | 通信事業者が回線と番号を管理し、自社で機器を持たない形。番号の移転の日程や緊急通報の扱いは事業者によって異なる。対応事業者は Microsoft の事業者一覧で確かめる |
| Teams Direct Routing | 使える(SBC を用意する) | 既存の回線や PBX を生かしたい場合に向く。SBC(回線と Teams をつなぐ機器)の容量や証明書を見直す必要がある。同じ SBC の名前を ACS と Teams で同時には使えない |
Teams Phone extensibility を使うには、電話を受ける担当者の Teams Phone のライセンス、リソースアカウントのライセンス(Teams Phone に含まれる)、そして上のいずれかの接続方法が必要です。通話料は Teams 側の契約で支払い、ACS 側では通話の SDK の利用、録音、AIの機能などが従量で課金されます。ACS の電話番号だけで完結していた構成と比べると、契約と管理の範囲が Microsoft 365 側へ広がります。
電話をAIに受けさせる構成は「AIにつないでいるから大丈夫」ではない
Call Automation に音声認識や生成AIをつないで電話に応答させている構成は、「Azure のAIと組み合わせているのだから、単体での利用には当たらない」と考えたくなります。移行ガイドはこれをはっきり否定しており、「Azure のAIサービスなどにつないでいることだけでは、単体の ACS の用途が継続サポートの対象になることはない。対象かどうかは、Teams との連携の形で決まる」と書いています。電話をAIに受けさせる構成も、2028年9月30日以降は Teams Phone extensibility へ移すことが前提です。
AIの声を通話へ戻す部分は、機能の一覧で確かめる
Azure AI Voice Live API のように、発信者の声をAIへ流し、AIの声を通話へ戻す構成は、双方向の音声ストリーミングを使います。Teams Phone extensibility の対応機能の一覧に記載されているのは、「通話の音声を WebSocket へ流し出す」方向です。通話へ音声を戻す方向の項目はありません。移行ガイドも、「通話から音声を流し出せることは、それだけで通話へ音声を戻せることを意味しない」と注意しています。
一方で、音声や合成音声を通話に流す機能(Play)と、発話を認識する機能(Recognize)は一覧に記載があります。これらを組み合わせて一問一答の形で応答する構成なら、一覧の範囲で組めます。会話のように途中で割り込めるAIの応答を続けたい場合は、移行を決める前に、通話へ音声を戻す部分が期待どおり動くかを実機で確かめる必要があります。
着信を受けてから応答するまでの考え方は変わらない
Teams Phone extensibility でも、着信は Event Grid の IncomingCall イベントとしてアプリへ届き、アプリが Call Automation で応答します。着信が鳴るのは30秒だけなので、受け口のアプリは起動を待たずに応答できる状態にしておく必要があります。この考え方は、Azure Container Apps の料金を抑える設定で解説したとおりです。
録音は24時間で消える前提で設計する
ACS の録音の組み込みの保存先は一時的なもので、録音ファイルを取り出せるのは24時間だけです。これは Teams Phone extensibility に移っても変わりません。長く残す必要があるなら、自社の Blob Storage に保存する設定にします。また、Teams Phone extensibility で担当者(Teams の利用者)が加わっている通話の録音を始めると、Teams の既定の設定では録音を知らせる案内が通話に流れます。すでに自社で録音の案内を流している場合は、二重にならないよう設定を見直します。

メール送信の移行先は、社内宛てか社外宛てかで分かれる
アプリから通知のメールを送るために ACS Email を使っているケースも少なくありません。移行ガイドが Microsoft の代替として挙げる Microsoft 365 High Volume Email は、メールボックスやライセンスなしで大量に送れる仕組みですが、現時点で一般提供されているのは社内宛て(同じテナントの中)の送信だけです。お客様や取引先へ送る通知の移行先にはなりません。
| 送り先 | 移行先の候補 | 注意点 |
|---|---|---|
| 社内の宛先だけ | Microsoft 365 High Volume Email | 1通の宛先は50件まで。現時点の送信方法は SMTP |
| 社外の宛先を含む | Exchange Online、他社のメール配信サービス | Exchange Online は利用者どうしのメール向けで、大量の配信には向かない。送信数の上限がある |
すでに ACS Email で検証済みのドメインは、2028年9月30日まで使えます。新しいリソースで ACS Email を使い始めることは現時点ではできますが、この扱いは予告なく変わる可能性があるとされており、移行ガイドは移行期間を既存の用途の移行に使い、新しい用途を載せないよう勧めています。
いつまでに何をするか
期限まではおよそ2年ありますが、電話の移行には番号の移転や通信事業者との調整が含まれ、自社だけでは日程を決められません。次の順で進めると、判断が必要なところから先に片付きます。
1. どこで使っているかを洗い出す
Azure Advisor の「サービスの提供終了」のワークブックを開くと、提供終了の影響を受けるリソースを一覧でき、結果を CSV に書き出せます。Advisor の推奨事項にも、提供終了に関する項目が表示されます。担当者が把握していない検証用のリソースが見つかることもあるので、まずここで全体を確かめます。
2. 用途ごとに移行先を決める
上の用途別の表に沿って、移行先を決めます。電話は、日本での接続方法と、AIの声を通話へ戻す部分の確認を先に済ませます。移行ガイドは、Teams と連携する形へ移すと、Microsoft 365 のライセンスなど追加の費用がかかる場合があるとしているので、費用の見積もりもこの段階で行います。
3. 破壊的変更の対象は、新しいメジャーバージョンの SDK へ移す
破壊的変更を含む SDK は、新しいメジャーバージョン(たとえば 3.x に対する 4.x)として提供されます。今の SDK は移行期間中も動きますが、2028年9月30日以降も使い続けるには、新しいメジャーバージョンへ更新する必要があります。
4. データを取り出し、順序どおりに片付ける
チャットの履歴、通話の録音、Azure Monitor に残っている運用のデータは、期限の後は提供終了とともに廃止されます。必要なものは期限より前に取り出します。リソースを削除するときは、先に電話番号を解放してから削除します。
ACS の提供終了で押さえること
- 今あるリソースは2028年9月30日まで使え、サポートも続く
- 電話番号は、発表の時点で既存の番号を持たないテナントの新規取得が止まっている
- 日本では Teams Calling Plan を購入できないため、電話の移行先は Operator Connect か Teams Direct Routing
- AIにつないでいることは継続の理由にならず、AIの声を通話へ戻す部分は Teams Phone extensibility の機能の一覧で確かめる
- メール送信の代替の High Volume Email は社内宛てだけ
- リソースを削除する前に電話番号を解放する
弊社の考え方
弊社は、代表電話の一次対応をAIに任せる仕組みを、ACS の電話番号、Call Automation、双方向の音声ストリーミングの組み合わせで運用しています。これはまさに今回の提供終了と破壊的変更の対象の組み合わせです。既存のリソースなので期限までは使い続けられますが、恒久的な構成にはならないと判断しています。
移行は、①AIの声を通話へ戻す部分が Teams Phone extensibility で期待どおり動くかを実機で確かめる、②番号の接続方法(Operator Connect か Teams Direct Routing)を決める、③それが難しい場合は他社の通信基盤を検討する、の順で進めることを検討しています。あわせて、これから新しく電話をAIに受けさせる仕組みをご提案する場合は、ACS の電話番号を前提にした構成は今後とれなくなります。
弊社の支援
弊社は、Microsoft 365 と Azure の両方の導入を支援しているため、今回のように Azure のサービスから Teams の電話へまたがる移行でも、両側の設定をまとめて設計できます。どのリソースが影響を受けるかの洗い出しから、電話の接続方法の選び方、メール送信の切り替え、AIの応答部分の確認まで、お客様の構成に合わせてご支援します。
電話をAIに受けさせる仕組みそのものについては、AI電話とはもあわせてご覧ください。
よくあるご質問
こちらをクリックして「よくある質問」を表示
今使っている Azure Communication Services は、すぐに使えなくなりますか?
すぐには使えなくなりません。2026年10月23日より前に作ったリソースは、2028年9月30日まで使い続けられ、サポートやセキュリティの更新も続きます。ただし、新しい機能の開発は約束されていないため、期限までに移行先を決めて移す必要があります。
2026年10月23日までに申し込めば、電話番号を取得できますか?
既存の ACS の電話番号を持たないテナントは、2026年9月の発表の時点で、すでに新しい番号を取得できなくなっています。10月23日は提供終了の対象サービス全体への申し込みの締め切りで、電話番号の扱いとは別です。
今の ACS の電話番号を、Teams Phone extensibility でそのまま使えますか?
そのままでは使えません。Teams Phone extensibility で使えるのは、Teams のリソースアカウントに割り当てたサービス番号です。ACS の番号を使い続けたい場合は、ACS から番号を解放したうえで、Teams へ移す手続きを Microsoft の窓口に依頼します。
電話の応答にAIをつないでいれば、2028年10月以降も今の構成のまま使えますか?
使えません。移行ガイドは、AIサービスにつないでいることだけでは継続サポートの対象にならないと明記しています。Teams Phone extensibility へ移したうえで、使いたい機能が対応機能の一覧にあるかを確かめる必要があります。
ACS Email の代わりに Microsoft 365 High Volume Email を使えますか?
社内の宛先だけに送る用途なら候補になります。現時点で一般提供されているのは同じテナントの中への送信だけなので、お客様や取引先へ送る通知には使えません。社外へ送る場合は、Exchange Online か他社のメール配信サービスを検討します。
Teams Phone extensibility へ移すと、どのような費用が増えますか?
電話を受ける担当者の Teams Phone のライセンスと、日本では Operator Connect の通信事業者との契約か、Teams Direct Routing の SBC と回線が必要になります。リソースアカウントのライセンスは Teams Phone に含まれます。ACS 側では、通話の SDK の利用、録音、AIの機能などが従量で課金されます。
ACS をどこでどのように使っているかによって、急ぐべきところと、期限まで待てるところが変わります。現在の構成をお聞かせいただければ、影響の洗い出しから移行先の選び方、移行の順序まで、設計案をご提案します。お問い合わせよりお気軽にご相談ください。
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